卑屈ウジ虫ギョウ虫日記

外面が良く、朗らかで明るく楽しい子と周囲から評価される28歳アラサーウジ子。
しかしてその実態は、卑屈な考え方により脳内ウジ虫だらけの蟯虫野郎であった。
誰にも言えない卑屈な日々を綴る、そんな秘密のダイアリー。

顔面土砂崩れ

化粧をすると顔が変わります。ウジ子です。ほうれい線が気になるお年頃です。
顔が変わると言ったって歌舞伎のような化粧をするわけでもなければ、
ネットに上がっているような別人メイクができるわけでもありません。
顔に肌色のやつを塗って、粉をはたき、眉毛を描き、温めたビューラーで睫毛を上げ、
睫毛1本1本に黒色の繊維をつけ、まぶたに陰をつけ、目尻に線を引き、時にはつけ睫毛をつける。
そんな極普通の化粧をしているだけですが、中でもつけ睫毛の効果は絶大です。
ウジ子は「私?奥二重だよ 普段は一重なんだけど、ほらっ下向くとほらっ」と言い張る一重まぶたですが、
つけ睫毛をつけると何故か二重になるのです。


普段会社へ行く時はぎりぎりまで寝ていたいので、つけ睫毛はつけておりません。
眉毛とマスカラを付着させた顔面で出勤しております。
どこかへ遊びに行ったり、合コンをするときなどはつけ睫毛をつける。
そんな風に使い分けておりますが、ここで困ったことが発生してきます。




合コンで出会った殿方と会社帰りに遊びに行くことになったら、どの面下げて行けばいいのか?




選択肢①
朝から会社にばっちりメイクで行く


これはウジ子的にNGです。住み分けている世界の境界線があやふやになってしまいますし、
会社の人が「あれ?今日あの子デートなのかな?張り切っちゃって気持ち悪っ」と思われても困るからです。
ウジ子は何故だかわかりませんが、プライベートの恋愛の雰囲気を会社で悟られたくありません。
「彼氏いるの?」と聞かれれば、「います」なり「いません」なりきちんと答えますが、
自分からは一切そういう話はしません。
「どんな人なの?」と聞かれれば
「普通ですよ~ ○○さんとこみたいに面白いネタがなくって」と答えますし
「彼氏とデート行ったりしないの?普段どこ行くの?」と聞かれれば
「そのへんぶらぶらしてるだけですよ ○○さんは?」と答えますし
「普段どんな会話してるの?」と聞かれれば
「くだらない話をしてるだけで特に中身も無いですよ ○○さんのところはいつも楽しそうですね」と答えます。
とにかく、自分にそういう話がくるのを避けます。何故ですかね。自分でもよくわかりません。
そんなわけで、会社にばっちりメイクで行くのはとても気が引けるのです。無理です。




選択肢②
会社に行く時のようなありのままのウジ子で遊びに行く


①よりは②の方が現実的なのかなあとも思うのですが、如何せん顔が変わりますので悩みどころです。
この前会った時はパッチリ二重だった女が、まぶたの上の厚い脂肪を揺らしながら
その奥に獲物を狩る女郎蜘蛛のような鈍い輝きを秘めて駆け寄ってきたら、一体殿方はどう思うのでしょうか。
こんなことなら最初からばっちりメイクなんてしなきゃ良かったよ、と思うものの、
ばっちりメイクをしていなければそもそも今日のこの状況まで辿り着いていなかったと思うと、
薬物投与してでもオリンピックに出たかったベンジョンソンの気持ちも
今なら少しわかるような気がするのです。辛かったよね。


少々葛藤があるものの、面の皮を剥ぐのはもう少し先延ばしにしようと思います。




選択肢③
終業後、どこかのトイレで化粧直しをする


ウジ子は会社にいる間、化粧直しというものをしたことがありません。
例え12時間会社にいてもしません。帰宅する頃には目の下が黒くなり、
顔面はオリーブオイルを熱したフライパンのようになっているのですが、
なんとなく会社のトイレで化粧直しをする行為を恥ずかしいと感じてしまうのです。
「お前の顔面なんて誰も気にしちゃいねーよ」と思われてしまいそうで、化粧直しは気が引けるのです。
同様の理由で、別に化粧直しをしなくても、トイレにポーチを持っていく行為も恥ずかしいと感じてしまいます。
この恥ずかしい、と思う気持ちを拭いきれず、自分の顔面を犠牲にしているわけですので、
終業後に会社のトイレで化粧直しをするのはNGです。


ではどこかのコンビニに寄ろうか。
ウジ子は「コンビニでトイレを借りる時は、300円以上の物を買う」ことをMyルールにしています。
コンビニにとっては、商品を買って初めてお客様であり、コンビニのトイレはお客様専用のものであるからです。
また、お人様の土地で糞尿を垂らしておいて、たった100円ぽっちの買い物の利益率ではその罪は拭いきれないような気がするからです。
普段コーヒーを買う時ぐらいしかコンビニに立ち寄ることがないウジ子にとって、
この300円という金額設定はかなり悩ましいところなので、極力コンビにでトイレは借りないようにしています。
購入する候補としては漫画の最新刊ぐらいのもんですが、
会社帰りに殿方と会って遊ぶのに余計な荷物を増やしたくもないので、コンビニ案は却下です。
同様の理由で、その他諸々のお店に立ち寄るのもNGです。駅のトイレも混むのでNGです。


高度情報化社会と言われ様々な情報が飛び交っているこの2016年の喧騒の中で
トイレを捜し求める女郎蜘蛛EYEの女と成り下がるわけですが、
いやむしろ女郎蜘蛛って蜘蛛の中の蜘蛛、親分Of蜘蛛的なポジションであるから
ウジ虫とは似ても似つかない存在であって
自らを女郎蜘蛛とか言っちゃって今更恥ずかしくなってきたのですが、
とは言ってもウジ虫に目はないわけですから一体自分は何なのかと、重たいまぶたを吊り下げながら考え込むわけです。
そもそもトイレなんて人間様が使う施設にこだわる必要はないんじゃないかと。
極端な話そのへんの水溜りだって光を反射することに変わりはないのではないかと。
地面に這い蹲って泥水すするつもりでこれまで生きてきたんじゃなかったのかよと。


と決意新たに燃えていたところ、雨が降りませんでした。
仕方ないので駅前の謎のシルバーモニュメントで化粧をしようと思います。ああ、なんて面倒くさい。
世の中の皆様が整形したいなあと思う気持ちが今なら痛いほどよくわかります。
でもそれも人間様の評価に囚われているだけなんですよね。
いっそのこと全裸で街を歩いてみたら楽になるかなあ。今日も強気なのは頭の中の世界だけ。ウジ子です。

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